2023/03/25 14:41
これまで家は、建物の造りや立地など、「ステータスを表現する為」に使われている側面も少なからず有った。
そして、今度は時代の流れに乗ろうとして「家自体を便利な物」にしようとしている。
スマートホームである。
スマートホームとは、IoTやAIの技術を活用し、スマートフォンやAIスマートスピーカーなどの制御デバイス、テレビ、照明器具などの生活家電やエアコン、給湯器、スマートロック、インターホン、シャッター、換気システムなどの住宅設備などのデバイスを接続し、より快適な生活を実現する住宅のこと。
新たな成長領域として注目され、日本政府も国内での市場形成に向けた具体的な検討に着手している。
一見、成熟した住宅産業における次の一手として、時代に合った策に思える。
しかし、私は「AIの時代だからこそ敢えて」という路線で家の在り方を考えたい。
それは
これまでの、完成品の家を与えられていた「作り手主体」の世界から
不完全な物を自分で選択して、改善しながらその手間を楽しむ「住み手主体」の世界へのシフトである。
AIの時代でも、物質的に存在し続ける「住宅」の存在意義は何だろうか。それこそ帰って寝るだけの箱としてだろうか?それとも便利な道具としての存在?
本屋はネットショップにとって変わり、実店舗はたくさん潰れた。
でもその中で生き残っている店も有る。
それは、「実店舗しか提供出来ない価値」を提供しているから。
ショッピングも、ネットで買えるのにわざわざ実店舗に足を運ぶのは、実物を手に取って確認したい。行った先の街自体を楽しみたい。新しい発見が有るかもしれない、という期待が込められている。
令和の家の価値は、住むだけの「便利な箱」と考えるのではなく、キャンプの様に、敢えて「不便さ」に挑み、創意工夫や手直しという苦労の積み重ねの先に、喜びを見つける為のものとして捉えてみて欲しい。
「共に成長するパートナー」
「手を掛けて育てる子供」
「豊かな暮らし」を教えてくれる教師
として家に愛着を持ち、生き物として接する。
そうすることで
「今」を感じて、家と一体になる。
それは、今この時、この一瞬に起きていることをしっかりと味わうこと。
情報がさまざまに行き交う慌ただしい日常生活で、今一瞬に集中する時間は恐らくごくわずか。
今この瞬間の感情にフォーカスして、良いとか悪いとか判断をせず、ただありのままの自分を感じること。
それは、人間の根源的なところに訴えかけるパワーを持っていますし、それが人間性の回復につながると思っている。
わたし自身、リノベーションした夢のマイホームから一転、古いボロボロの家に移り住み、手直しをする度に新しい発見と、心の豊かさを手に入れてきた。
家を通じて、体を動かし、不便を楽しみリフレッシュする。これは体を動かす健全な遊びである。しかも没頭する事で現実逃避が出来る。
さらに、旅行や食べ物の様に終わりが無い。頑張ったら頑張った分、毎日の暮らしの質の向上、豊かさに跳ね返ってくる。そしてそれが、24時間、365日効果が続く所が面白い。
家は今も昔も、誰かに任せっぱなしの歴史を辿ってきた。着工から完成までの工事に関する事は大工や設備、内装業者に任せっきり。完成後もメンテナンスを怠り、問題が有れば専門業者に丸投げ。
いざ、自分で何かをしようとすれば、何から手をつけたら良いのか、まるで検討が付かない。
「家の手直しは、誰かにやってもらう物」という常識に疑問を抱き「自分で手を掛ければ良い」という考え方を持ち、自ら主体的に家と関わり、対話する。
新しい時代だからこそ、家に愛着を持って家族の様に接し、共に成長したいものである。